函館日記

函館暮らしの日記

「道道 立待岬函館停車場線」という黒歴史

立待岬函館停車場線」という道道都道府県道)があります。その名を聞けば、函館駅前から立待岬に行けるのだろうと思うはずです。

函館駅前から十字街までは、国道(通称・海峡通)と重複しています。 そして十字街を左折します。 ここまで来れば道なりに青柳町、谷地頭を経由して立待岬に行けるものと思う人が多いと思います。

ところが、高田屋嘉兵衛像のところで右折して「護国神社」のところに上り、さらに函館山登山道路に入ります。

そうです。立待岬函館停車場線の正体は、函館山登山道路です。

しかし、函館山には登れても、立待岬には行けません。 なにせ、つつじ山駐車場から先は、一般車両通行止です。

では、つつじ山駐車場のバリケードの先、徒歩で進行したらどうなるかというと、千畳敷までは北電(北海道電力)の業務用車両も走る未舗装路です。 しかし、千畳敷から先、立待岬に下りるには、登山路です。つまり、山道です。

つまり、立待岬函館停車場線は、未開通(未供用区間あり)のまま、名称を改めることもなく、放置されています


函館山は戦時中までは「津軽要塞」という軍事拠点の一部でした。一般人は入ることも許されませんでした。

戦後に、軍事用の道路を基に、観光登山用道路を敷設しました。これが、函館山登山道路です。 そして景気の良かった頃に、自動車での観光登山が増えました。 そうすると、現行の函館山登山道路では通行量をとてもとても捌ききれなくなってきます

そこで、現行の道路を登山専用にし、下山専用の道路を別途敷設して、一方通行にする計画が立てられました函館山に登った観光客がそのまま立待岬方面に下り、立待岬や碧血碑などを見て周るという想定の道路計画です。 観光産業と密着している市が計画を推進し、道庁に同調してもらって「道道」として指定をもらうという既成事実までつくって、工事を進めようとしました。

ところが、開発の手が既に入りすぎている函館山に、さらに開発の手が入れられるとなると、生態系への致命的な破壊が起こることが容易に推測されます。 それで、いわゆる環境保護運動からはもちろんのこと、公園関係の団体からも反対され、市も遂に計画断念。

そして、棚晒しで名称だけは放置されて現在に至るのです。

おそらく遠い将来も、「立待岬函館停車場線」が全面開通することはないでしょう。

そうして現在は、夜景目当てに混雑する夕方から夜間にかけては、旅客運送車両、いわゆるバスやタクシー、言い換えれば第2種運転免許の車両のみに通行を許すという交通規制をかけています。 また、観光バスの山頂付近の駐車場利用時間に規制をかけて、回転率を高めています。 もっとも、それでも夜間の函館山登山道路の混雑、渋滞は酷いのですけれども。


さて、この「立待岬函館停車場線」という経路も、無理があったと私は思います。

なぜならば、夜景を見に函館山に登った観光客が立待岬に、寄りませんよねきっと(笑)。 昼に登る人を想定していたのだと思います。

しかし今は実際には、昼に函館山に登る人は比較的少なく、夕方から大混雑します。

おそらく往時は、夜は今以上の大混雑で、昼にまで人が溢れ出てきていたんだろうと思いますね。だからこんな計画を思いついたのかと。

もうひとつの無理は、立待岬から青柳町方面までに極端に増加するであろう交通量をうまく流せる道路を敷けるか、ということです。

そして、もしも「立待岬函館停車場線」が成立していたら、宝来町から松風町の間の、市電の旧・東雲線の道路も大混雑しただろうと思います。 その点でも、交通量を捌けたのでしょうか。 なにせ、道路の中央を路面電車が走っていたわけですよ?


では、計画頓挫で函館山の生態系は保てたのかといえば、そうではありません

そもそも、戦前までも、函館山は麓から(木材や燃料目当てで)ずんずん木を伐ってしまいましたし、軍事拠点にするために建築物をつくったりもしていました。 (砲台を建てるために山頂を削ったから函館山の標高が低くなったというのも、知る人ぞ知る有名な話です。ちなみに、その砲台跡の上に展望台を建てたということも……)

裸になってきた函館山に、替わりに植えたのは杉です。 (昔は、現在の函館西高の辺りにあったが、谷地頭の現在地に移転した)函館八幡宮の境内という理屈もあってなおさらに、杉が植えられました。 こんなのは人間の信仰の一種で、エゴイズムなのですが。 だから、現在の函館山は自然植生とかなりかけ離れています函館山の麓付近、下半分の鬱蒼とした杉林は、人工林です。人が杉を植えたんです。植えたくせに、伐って植え替えたりしないので、高木がボウボウで薄暗いです。函館山に限ったことではないですが、日本人はこのように、後始末をしない無責任な人間です。

また、函館市街の人間の活動を利用して、カラスが増殖してきました。 そのカラスの根城になっているのがまた、函館山です。 現在の函館山で人の行き来が多いのは、函館山登山道路と旧登山道くらいなもので、その他の登山道には登山者が少し通るくらいでしかありません。 立待岬函館停車場線」が頓挫してなおさら、千畳敷方面は、登山コースの一部でありながら、カラスの巣窟です。人を襲うかもしれないくらいです。

しかし、市のやっていることは、維持であって、回復ではありません。 要は、現状維持です。 実際、市役所どころか、地元住人も、現状をただしく理解していないと思います。 私にはふざけていると思えますが、市は「函館山の豊かな自然」とか、のたまいます。

だから、杉林を植え替えるとか、カラスを駆逐するとか、そういう回復策はとられていないも同然です。 むしろ、ヘタに環境保護のための規制をかけてしまったために、手出しが全く不可能になったといえます。